「はやぶさ2」地球スイングバイ いざ、Ryuguへ!

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九州支部の佐藤千聖です。全国リレー記事第3回は、12月3日(木)に行われた、小惑星探査機「はやぶさ2」の地球スイングバイについてです。一般の方にも楽しく読んでいただけるように、できるだけ分かりやすく書いてみました。

地球スイングバイとは?

2014年12月3日に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は、目標の小惑星「Ryugu(リュウグウ)」を目指して、今、宇宙を旅しています。はやぶさ2は、打ち上げからそのまま真っ直ぐ小惑星へ向かうのではなく、まず、打ち上げ後の1年間は地球の軌道と似た軌道に沿って、太陽の周りを公転します。その後、目的地に向かうために地球に接近し、地球の重力と、その元である地球の移動を利用して加速するとともに、軌道変更を行います。これを「地球スイングバイ」と呼びます。ベクトル(=速度の矢印)の足し算で考えると理解しやすいです。

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※地球中心への進入速度と脱出速度は同じだが(青矢印)、太陽を中心として見た場合、探査機の速度は変化している(赤矢印)

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(図1)はやぶさ2の軌道概要(2015年10月現在)

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(図2)スイングバイによる軌道変化の様子(太陽が原点にある座標系で見た場合)

なぜイオンエンジン(=電気推進エンジン)を使って加速しないのか。それは、スイングバイの方が少ない燃料で速度や軌道を大きく変えることができる、いわば「省エネ」だからです。
スイングバイ後は、リュウグウの軌道に近い軌道に入り、太陽を約2周して、2018年にリュウグウに到着する予定です。

【動画】「はやぶさ2」軌道シーケンスCG(斜め俯瞰)

※Ryugu=仮符号1999 JU3
http://jda.jaxa.jp/result_strm.php?lang=j&id=139700d6c2875ec7c05d9ff12767e2ca

では、今回のスイングバイについて、もっと深く見てみましょう。

スイングバイに関するQ&A

先日、「はやぶさ2」公式Twitterにて、はやぶさ2に関するQ&A企画がありました。そこでツイートされたスイングバイについての回答をいくつか紹介したいと思います。( )内は、私の補足です。

Q1.今回のスイングバイで、どのくらいのスピードがつくのですか?

A. 今回の地球スイングバイでは、太陽に対する速度が、秒速30.3kmから秒速31.9kmに加速します。1.6km/sの加速ですね。
(こちらは、太陽の周りを回る公転の速度のことを示しています。地球の公転速度は秒速約29.8kmです。)

Q2.打ち上げからちょうど丸一年でスイングバイですが、1年に一度しかスイングバイはできないものなのでしょうか?

A. 今回は、打ち上げたあと、イオンエンジンによる軌道変更をあまり行わなくて済んだので、ちょうど1年後に地球に戻ってくることになりました。「はやぶさ」初号機のときは、1年よりちょっと経ってから地球に戻ってきました。
(はやぶさ2は、軌道変更をほぼ行わずに地球に近い軌道を回っていたので、地球と同じく公転周期が約365日だったという訳です。)

Q3. スイングバイ時に月のような近くにある天体の重力の影響を受けないのでしょうか? 受けるとしたらどのように防いでいるのか気になります。

A. スイングバイに限らず、探査機の軌道運用においては、太陽や惑星の引力は考慮して計算をしています。地球に接近するときには、もちろん月の引力も考慮しています。
(はやぶさ2に限らずですね。)

Q4. 地球スイングバイをするために、はやぶさ2で使われている技術の中で、地球上での生活や産業などの技術の進歩のために、応用できるものや、既に使われてるものについて、教えていただけないでしょうか?

A. スイングバイそのものは探査機のための技術ですが、そのための正確な計算手法が地上のいろいろな精密計算に役立つかもしれませんね。
(「はやぶさ」初号機では、探査機の電力制御技術が鉄道や家電製品などで実用されようとしています。)

Q5. イオンエンジンと併用してのスイングバイですが初代はやぶさから得られた知見で改善やさらに工夫を凝らしたことがあったら教えて下さい

A. 「はやぶさ2」では、「はやぶさ」のときのスイングバイ軌道とかなりことなっており、地球を撮影するための姿勢制御が難しいものでした。姿勢制御をすると軌道が乱れるので、「はやぶさ2」では姿勢制御に工夫をしました。
(姿勢制御装置は、「はやぶさ」初号機で3台中2台が故障したので、はやぶさ2では4台搭載されいます。)

Q6. スウィングバイの時に日本直上を通過しますが、軌道計算時に考慮されたのですか?それとも偶然?

A. 実は、ちょっと考慮しました(^_^)
(予想外の回答でした(笑)皆さんは、はやぶさ2を見ることはできましたか?)

(図4)地球から見たはやぶさ2の方向
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以上の6つでした。
「地球の重力と移動を使って加速する」という動作は、一見単純に思われますが、とても深くて面白い原理です。地球スイングバイとイオンエンジンの推進方法を組み合わせる方式は、「はやぶさ」初号機が世界で初めて行った軌道変換方法です。
はやぶさ2のこれからの活躍が、ますます楽しみになってきましたね!

全国リレー記事第4回は山下さんです。お楽しみに。

図の出展

JAXAデジタルアーカイブス(はやぶさ2)
http://jda.jaxa.jp/category_p.php…
はやぶさ2プロジェクトサイト
http://www.hayabusa2.jaxa.jp
ファン!ファン!JAXA!
http://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/6078.html

参考

はやぶさ2プロジェクトサイト
http://www.hayabusa2.jaxa.jp
小惑星探査機「はやぶさ2」公式Twitter
https://twitter.com/haya2_jaxa

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