第5回 「惑星分光観測衛星 ひさき」

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皆さんこんにちは!
天体物理局の和泉美希です。

今年の夏は宇宙博で賑わいましたね〜
皆さんも楽しみましたか?
私は1人でこっそりと行ってきました。かのイプシロンロケットの抱き枕を抱えて、夢に浸かる毎日です。

そういえば、イプシロンロケット試験機が打ち上がったのは、昨年の9月14日でしたね。度重なる延期こそあれ、打ち上げは無事成功しました。
早いもので、あの勇姿を見てから約1年と1ヶ月が経ちます。

ところでそのイプシロンロケット試験機、何を乗せていたんでしたっけ?

そうそう、”SPRINT-A”。
打ち上がってから、”ひさき”という名前になったんでしたね。

ではその”ひさき”、何をするために宇宙へ向かったのでしょうか?

一体いま何をしているんでしょうか……?

記事は少し長くなりますが、ぜひご一緒に、解明していきましょう!

★惑星分光観測衛星、ひさき

ひさきの計画名は、”SPRINT-A(Small scientific satellite Platform for Rapid INvestigation and Test – A)”。
世界で初めて、”惑星専用”の観測衛星として開発された宇宙望遠鏡です。
地上から約1,000キロメートルの軌道上を周回しながら、惑星大気と磁気圏の謎に迫る観測を行っています。
衛星自体がコンパクトである上、一貫した標準部に多様な用途に応じたバス部を取り付けるという、「セミオーダーメイド型」を目指す日本の衛星の初号機であることも話題になりましたね。
これによって、より低コストでより短期間、つまりより手軽に衛星を打ち上げられるようになるぞ、というわけです。

“ひさき”という名前の由来ですが、イプシロンロケットが打ち上げられた内之浦の地名である「火崎」と、観測対象が「太陽(ひ)の先」であることがかけられているそうですよ。

★ひさき、何を調べているのか?

ひさきは主に次の二つのテーマを調査しています。
⑴地球型惑星の大気が宇宙空間に逃げ出すメカニズム
(2)固有磁場をもつ惑星の磁気圏が破壊されるメカニズム

それぞれ、強い太陽風が惑星の大気や磁気にどのように作用するかを調べることで、初期の太陽系で何が起こっていたか、どうして現在のような状態になっているのかを明らかにすることを目指しています。

★ひさき、分光観測 とは一体?

ここでは、ひさきの主な観測手段である「分光観測」というものにスポットライトをあてましょう。

惑星を観測する宇宙望遠鏡、なんて聞くと、科学雑誌などでよく見かけるような、美しい惑星の天体写真を想像した方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?
しかし、ひさきはそのような写真を撮影する目的をもっていません。
惑星”分光観測”衛星ひさきが欲しいのは「スペクトル像」です。
「画像」というよりも「データ」と呼んだほうが近いかもしれませんね。

スペクトル像とは、私たちの目に見えている可視光や、目に見えていない紫外線・赤外線などを分光器で分解して波長の順に並べたもののことを言います。
綺麗なグラデーションの連続スペクトル(太陽光が有名です)、とびとびの線の様な線スペクトル……ひさきによる観測の場合は、とびとびの”点”スペクトルとでも言ったら良いでしょうか。

惑星大気から流出した粒子は、太陽光を受けるとそれぞれに固有の光を散乱することが知られています。
これらの光は「極端紫外線」という電磁波の波長域なのです。
惑星から届いた極端紫外線を鏡で集め、それがスリットを通ることによって生じるスペクトル像の波長の分布やその明るさから、放出された惑星大気にどのような成分がどの程度あるのかがわかります。
また、長時間露出の観測によって、宇宙空間に押し流されている大気の量も計算できるんです。

それらを太陽の活動状態と照らし合わせて……前述のメカニズムを解明しようとしているんですね。

……なんだかちょっと難しいですね。
私もつい先日物理の授業で習ったところですが、理解できるような、できないような。

★ひさき、いま何をしているのか?

ところで、ひさきはいま何をしているんでしょう。
もちろんいま、こうしている間にもひさきは地球を周回して、惑星からの光を集めているのです。
なんてことは自明ですね。

今年の9/26に発表された、JAXAのプレスリリースをご覧になりましたか?
ひさきが挙げた成果が書かれています。

とても簡単に言いますと、ひさきは木星放射線帯の形成・維持に必要な高温電子輸送の証拠を世界で初めて捉えました。
この輸送メカニズムはまだ統一的には理解されていませんが、今回の発見は、既存の有力な学説を裏付ける重要な証拠となります!!
興味のある方はぜひ、下記のリンクから記事をご覧になってください!

http://www.jaxa.jp/press/2014/09/20140926_hisaki_j.html

★ひさき、今後の期待

前に述べた通り、ひさきの観測で、太陽風と大気の流出量、太陽風と磁気圏の関係が分かると期待されています。
ハッブル宇宙望遠鏡や、他の人工衛星と協力して調査をしたりもするのですよ。

そんなことを調べて、何か良いことあるの?という声が聞こえてくるかもしれません。
太陽の活動が活発になったとき、地球の磁気圏や大気にどのような変化が起こりうるのか、推測するための材料をいま揃えることは、長い目で見て我々地球人にとって有益なことではないでしょうか。
他の惑星が辿った変化は、きっと他人事はないはずです。

また、尽きることのない探究心を満たしていくという意味でも、ひさきの挙げる成果は私たちに充分に還元されることでしょう!

地球惑星科学分野に特に興味がある私としても、これからもひさきの活躍から目が離せません!!

SPICAリレー記事、今回もお楽しみいただけましたでしょうか?
次回の配信は10/26(日)、担当は技術局の間宮さんです!お楽しみに(*^^*)

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