第11回 「夜空にたなびくほうき星、彼らの故郷は何処?~太陽系の果てからの旅人たち~」

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皆さんこんにちは。第11回のリレー記事を書かせていただきます天体物理局山田麟です。よろしくお願いします。

古来より彗星はその一見不気味な姿からか、戦争や飢饉の前兆と思われるなど、心理に大きな影響を与えてきました。「日本書紀」にも西暦684年のハレー彗星の回帰に関する記述があります。しかし、その彗星がどこからやってきて、どこに向かうのか、それは長年にわたって解明されず、研究の対象になってきました。そこで、今回のリレー記事では、ラブジョイ彗星(C/2014Q2)が明るくなっていることもあって、彗星の故郷について紹介したいと思います。

彗星の故郷は大まかに分けて2つあります。

1:エッジワース・カイパーベルト
2:オールトの彗星雲

(1)エッジワース・カイパーベルト

近年の観測により海王星よりも外側にとても多くの天体があるということが分かってきました。これらの天体には大きいものから小さいものまで、さまざまな大きさのものがありました。これらの天体を、提唱者にちなんで、エッジワース・カイパーベルト天体(EKBO:エクボ)と呼びます。

2006年、惑星の数が1つ減りました。観測技術が向上するにつれて冥王星よりも外側の軌道に冥王星と同じ、もしくは大きい大きさをもった惑星が発見されたため、惑星の定義を見直す必要に迫られたためです。このとき、その外側に見つかった天体というのもエッジワース・カイパーベルト天体です。

そのカイパーベルト天体の中には、大きさが直径数キロから数十キロ、主成分は氷という種類のものがあります。これが彗星です。カイパーベルトの中にいるときには十分な太陽からのエネルギーは受けていないので、尾は引いていません。しかし、木星や土星、太陽の重力の影響を受けて軌道が変化し、太陽に大きく接近すると、尾を引くようになります。これが地球上から観測されると、みなさんご存じの尾を引いたほうき星として見えるのです。

(2)オールトの彗星雲

先程紹介したエッジワース・カイパーベルト天体は海王星軌道よりも外側、太陽から数十~百数十天文単位のところに黄道面にそって広がっていたわけですが、このオールトの彗星雲はそれよりもさらに遠い太陽から数光年のところまでボール状に広がっているといわれています。これほどの距離の天体は非常に暗く、地上からの観測はきわめて困難です。さて、そのオールトの雲ですが、1996年に大彗星となった百武彗星の故郷でもあります。

余談ですが、彗星は回帰する周期に応じて長周期彗星と短周期彗星に分けられます。このうち、長周期彗星はオールトの彗星雲から、短周期彗星はエッジワース・カイパーベルトからやってきます。

以上で主な2つの彗星の故郷について紹介しましたが、いずれの場合も彗星はとても遠い太陽系の果てから長い旅をしてやってきているということになります。最近では、クロイツ群と呼ばれる太陽近傍を周回している彗星群が注目されることもあります。

先程ラブジョイ彗星を紹介しましたが、この彗星も太陽系の果てから長い旅をしてきたものです。双眼鏡を使えば肉眼でも観察できますので、太陽系の果てに思いをはせながら、彗星観察というのはどうでしょうか?

次回配信は1月25日の予定です。お楽しみに!

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